司法試験の勉強と司法修習の勉強は何が違うのか?
A.司法試験では,主として基本的な法的知識・法解釈及び与えられた確定した事実に法を当てはめるということを勉強していく。 司法修習では,司法試験の勉強で習得した基礎的な法的知識等を前提として,主として事実認定,要件事実及び実務を勉強していく。
1 法的三段論法とは・・・
法適用に関する基本的な考え方として,「法的三段論法」という考え方があります。
三段論法とは,一般原理・原則を大前提とし,具体的事実を小前提とすることによって,一定の結論を導き出すという推論方法のことをいいます。
これを法適用に関して用いたものが法的三段論法です。
すなわち,法的三段論法とは,法規を大前提とし,具体的事実を小前提として,法規を具体的事実に当てはめることによって結論,つまり法律効果を導き出すというものです。
2 司法試験の勉強とは・・・
法的三段論法を用いるには,まず大前提となる法規,特に法律について知らなければなりません。 つまり,法律には何が規定されているのか,その法律の規定はどういう意味なのかという法律の解釈ができなければ話にならないわけです。
司法試験の勉強のメインは,この法律解釈の基礎を知るということです。 基本的な法律を使ってこの法律解釈の基礎知識と基礎理論を理解していくというのが司法試験の勉強なのです。
基本的な法律というのは,旧司法試験であれば,憲法,民法,刑法,商法,民事訴訟法及び刑事訴訟法の基本六法です。 新司法試験であれば,これらに行政法や倒産法などの選択科目が付け加えられます。
そして,この法律解釈によって大前提を確立させた上で,小前提となる具体的事実にその大前提となる法律を当てはめて結論である法律効果を導き出します。
司法試験レベルでは,小前提となる事実はすでに問題として与えられていますから,大前提となる法律解釈さえできていれば,あとは第3段階である結論を導き出すための「当てはめ」だけが問題となるわけです。
3 司法修習の勉強とは・・・
司法修習では,もちろん法律解釈も勉強します。 とは言っても,基本的には,司法試験レベルでの法律解釈と同程度又はそれより少し高度なものといった感じです。
むしろ司法修習においては,それとは別の段階の事柄が勉強の中心となります。 それが「事実認定」と民事における「要件事実」です。
もちろん実務における手続や処理の仕方なども勉強していきます。
4 事実認定とは・・・
司法試験レベルでは事実は問題としてすでに与えられていますから,事実の存否については問題となりません。
しかし,現実の実務では,ある事実があるのかないのか自体が争いになるということがほとんどです。 したがって,当てはめをする以前に,本当に特定の事実があるのかどうかを確定させる作業が必要となります。 法的三段論法で言えば,小前提となる具体的事実を認定する作業です。
事実を確定させるためには,証拠から経験則を用いて推論していく必要があります。 簡単に言うと,こういう証拠がある場合には,経験上,こういう事実があるはずだ,というように推論していくわけです。 こういう事実の確定作業を事実認定といいます。
司法修習では,この事実認定を勉強していくことになります。 さまざまな事例を通じて,証拠から事実を認定するスキルあるいは理論を学ぶのです。
5 要件事実とは・・・
要件事実は,おそらく修習中に一番勉強する事項だと思います。 中には,研修所は要件事実を勉強しに行くところだと言う人もいるくらいです。
法律効果が発生するためには,法律要件が充足されていなければなりません。 逆に言えば,法律要件が充足されていれば,法律効果が発生するということになります。
しかし,これはあくまで実体法上の話です。 現実世界では,その法律要件に該当する具体的な事実があってはじめて法律効果が発生することになります。
この法律効果を発生させるための法律要件に該当する具体的事実のことを,「要件事実」といいます。
裁判で何らかの法律効果の発生を主張しようという場合には,この要件事実を主張し,その事実があるということを証拠によって立証しなければ,自分の主張を認めた判決をもらうことはできません。 反対に,相手方は,法律効果が発生しないように様々な主張・立証を行います。
そうすると,誰が,どのような事実を主張・立証していくのかということが,裁判の勝敗にとって非常に重要となります。 主張・立証責任と呼ばれる概念です。 そして,その基本となるのが要件事実なのです。
つまり,要件事実は,抽象的な法律と現実の裁判とを結びつける重要な理論なのです。 司法修習の民事系科目では,この要件事実の学習が中心となります。
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